program report
レポート

プロのフォトグラファーと
一緒に、写真の可能性を知る。
子どもたちの創造性を触発するクリエイティブ体験プログラム「amana for kids(アマナ・フォー・キッズ)」。8月23日の開催開始に先駆けて、トライアルイベントを8月5日(火)に実施しました。場所は、アマナが広告撮影で利用する港区の海岸スタジオ。アマナ社員の子どもたちを中心に小学2〜6年生のキッズたち20名が参加しました。今回、写真をテーマにしたワークショップで、プロのフォトグラファーとともに“写真ってなんだろう?”と、考えます。
最初は全員で車座に座り、クリエイティブプランナーの徐維廷のプレゼンテーションからスタート。「ふだん、写真は撮っていますか?」という問いかけには「スマホで撮っている!」「私は、自分のカメラを持っているからそれで撮っているよ!」と次々と声が上がります。どういう時に写真を撮りたいと思うのか、何のために写真を撮るのか、と「写真」というメディアを通し、いったい何ができるのかという問いかけが続き、「写真で伝えたいことを伝えるために必要なことは何?」という今回の本題へ。
写真の力で伝えられることって、何だろう?
ふたつの写真を並べて、どちらが高級そうにみえる? どちらがかわいく見える? と比較します。撮影のテクニックや見せ方の違いで、同じ素材を使っていても、表現方法が違えば、伝えられる情報も変化するのではないか、ということを子どもたちと考えます。
写真には、自分たちの伝えたいことをよりクリアにできる手段があるーーそれを学んだ上で、いよいよ実践へ。2つのチームに分かれて、プロが使うスタジオで本格的な機材や照明、プロップ(小道具)を使い、自分が撮りたいとイメージしたものを実際にどれだけ表現できるかに挑みます。今回の講師は、ポートレイト(人物)撮影を曽根原健一が、フードの撮影を大野咲子が担当。2人とも多くの広告を手掛ける日本を代表するフォトグラファー。プロの写真家の指導のもと、今日この日にしか撮れない一枚を、子どもたちの自由な発想と感覚で作り上げていきます。
ふたつのチームに分かれて撮影スタート!
ポートレート撮影チームは、まずさまざまなポートレイト写真をチェック。今日は一緒にきている家族が被写体です。どんな雰囲気で人物写真を撮影したいか、背景は何色がいい? 光はナチュラルに映える明るめ? シャープな印象の暗め? それぞれ、好みのイメージを膨らませていきます。撮影の方向性が決まったら、実際のスタジオへ。セットが組まれたスタジオに入るとちょっとした緊張感が漂います。これがプロの現場だ! と子どもたちも顔が引き締まります。
講師からシャッターの切り方を教わり、カメラの前に家族に立ってもらって、いよいよ撮影へ。でも、カメラの前のパパもママも緊張しているのか、なかなかどう撮ればいいのか決まらない…。「ポートレイト撮影は短距離走で瞬発力勝負。元プロバスケットボール選手のマイケル・ジョーダンを撮影したときなんか1分くらいしか時間がなかった。その短い時間でも集中すればいい写真は撮れる。とくに笑った瞬間はシャッターチャンス。逃さないようにしっかり被写体を観察して」「それに、いい表情を引き出すのもフォトグラファーの仕事だよ」と、曽根原。
人物撮影は瞬発力、最高の瞬間を切り取る。
撮っている側の子どもたちに、もっとパパやママにディレクションしてみようとアドバイス。「もっと自然に笑って!」「いつも家でゲームしている時の感じで!」「ちょっと上を向いてみて」「足を組んでみたら?」「ジャンプして!」と、次々とアイデアが。パパとママも我が子からの声掛けだからか、カメラ前でもリラックスした表情を見せられるように。子どもたちの視点で、ここだ! という瞬間でシャッターを切り、自然体の笑顔が次々と撮影されていきました。撮影が終わったあとは、曽根原と選手交代。今度は撮られる側を体験。プロは何をみて、どういう瞬間を撮影していくのかを、今度は被写体として体験します。家族と一緒に撮影をしてもらうのも、とてもいい記念になりそうです。
映えるスイーツをより魅力的に見せるには?
一方、フード撮影チームは、スタジオに入ると甘い香りが漂ってきます。テーブルの上には、ドーナツやカップケーキ、チョコレートなどかわいいスイーツがたくさん。「食べてみたい!」と子どもたちからも歓声が上がります。スイーツだけでなく、それらを並べるプレートやガラスの器、木のボード、さらに下に敷く布やバックペーパーや天板なども用意され、スタイリングも自分たちで考えられるように。まず、撮影したいスイーツを選び、それから、それぞれどういうイメージで撮影をしたいかを紙にまとめて書きながら考えます。大野から「食べ物を撮影するときには、まず、イメージラフを描きます。どういう印象に仕上げたいのかを考えて、お皿などの小道具選びをしたり、どんな光を当てようかと考えたり、どういう角度から撮るのがいいかも考えます。高級感がある落ち着いた雰囲気なら、固めの光でパキッとした感じがかっこいいし、やわらかい光で自然体な感じで撮影することもできますよ」
子どもたちは、おいしそうなスイーツを前にイメージを膨らませていきます。お皿選びや、背景の布や天板も自分たちでどんどんセレクト。意外と迷いなく、みんな「これがいい!」と決めていくのが印象的。イメージが決まった子から、順番に撮影台の上にお菓子を自分のスタイリングで並べていよいよ撮影開始です。モニターを見ながら「もう少し上から撮ってみたい」「ここに空間があるからスプーンを置いてみよう」「手前のドーナツを食べかけにしたらかわいいかも!」など講師と一緒にディスカッションしながら、よりよいイメージになるようにアレンジを加えていきます。
黒い天板を使った際には、大野から「クリスマスの撮影の時などに使うテクニックなんだよ」と、粉砂糖を振るアイデアを教えてもらう場面も。上から粉砂糖を振りかけた瞬間にシャッターを切ると、お菓子の上に雪が降っているようなイメージに。「絶対、これがいい!」とモニターの前に子どもたちが集まり、どのカットがいいかみんなで話し合う場面もありました。「こんな技もあるなんて、面白い!」
いい表情が撮れた! と思えたのが楽しかった。
ワークショップの体験時間は1時間ほど。みんな、お互いの作品に感想を言い合うなど、楽しんでトライできた様子。子どもたちに感想を聞いてみました。
「人物撮影に参加しました。撮られるより撮る方が楽しかったです。いい表情を引き出すのが、けっこう難しいんだなと思いました。待っていて、今だ!ってときにシャッターを押して、いい顔が撮れたときがすごくうれしかったです。おじいちゃんのカメラがあるので自分でももっと撮ってみたいって思いました」(いろは、8歳)
「写真を撮ってもらえたのがうれしかった。憧れている大谷翔平になった気分! 照れ臭かったけど、かっこよく撮ってくれたのでよかったです。どう撮られたらかっこいいかをもっと考えてみたいです」(はるき、8歳)
「スイーツの撮影をしました。スマホで撮るのとは全然違いました。光の感じとか、角度を変えると、印象がすごく変わる。こんなに素敵にできるんだと知ってもっと写真のことを知りたいなと思いました」(いちか、10歳)
「お菓子が全部カラフルだったから明るい感じで撮りたいなと思いました。でも、イメージ通りに並べてみても、うまくいかなくて難しかった。先生にアドバイスしてもらって、角度や並べ方を変えてみたらうまくいった。次はもっと違うイメージにも挑戦してみたいです」(はる、10歳)
今回、講師として参加した曽根原と大野にも感想を聞きました。
「まだ実験的な段階のプログラムですが、子どもたちが素直に反応してくれて、撮影を楽しんでくれていたので、よかったと思いました。ふだんから密なコミュニケーションをとっている親子だからこそ撮ることができる表情や雰囲気がある。それが写真にダイレクトに現れるのが面白いなと思いました。もっと踏み込んで、一緒に撮ったものをセレクトしたり、実際にプリントして全員が撮影したものを見比べてみるなどできれば、もっと写真の可能性を伝えられるのではと思っています」(曽根原)
「それぞれ1カットずつ好きなお菓子を撮影するイメージでしたが、お互いの写真についてみんなでモニターをみながら“これかわいいね”“こっちのほうがいいかも”など意見を交換しながら、それぞれのカットを全員で作っていく雰囲気になったことにとても驚きましたね。和気あいあいとみんなで会話しながら、いいカットを導き出していく本当の現場感のある撮影になったのではないでしょうか。盛り付けのアイデアやイメージの発想は、大人にはないものが多くこちらもとても刺激を受けました」(大野)
プロが手がけた「本物の仕事」を体験し、子どもたちのクリエイティビティを刺激する「amana for kids(アマナ・フォー・キッズ)」。ワークショップを通し、子どもたちの中に可能性ゆたかな表現の“種”が育まれていきそうです。