program report

レポート

08l23vol.02
「amana for kids」第一回目のプログラム開催

写真で自分の「好き」を伝える、
撮る楽しさ、表現の可能性を体験

AIが先導する時代のモノづくりはどのような変容を遂げるのか。手段が変わっても、“美しい”や“好き”を表現したい人の“創造欲”は変わらない。そう信じるamanaでは、子どもたちと一緒に、つくる喜びや、考える楽しさを知るためのクリエイティブ体験プログラム「amana for kids(アマナ・フォー・キッズ)」をスタートさせました。初回となるワークショップを8月23日(土)に開催。会場は、本格的な撮影体験ができる港区の海岸スタジオを用意しました。公募により集まった小学1年生〜中学2年生の子どもたちが参加しました。

今回、開催されたのは写真をテーマにしたワークショップ。「写真ってなに? 伝えるってどういうこと?」をキーワードに、amanaで撮影された広告写真をサンプルとしてみながら、自分の「好き」を「伝える」ためには、どんなテクニックがあり、どんな表現が可能なのかを考え、実際に自身でカメラのシャッターを切って作品作りに挑みました。

すてきだな、おいしそうだな、と思ってもらうために

講師役として参加したクリエイターは、クリエイティブプランナーの徐維廷、フォトグラファーの曽根原健一と大野咲子。ポートレイト撮影を曽根原が、フード撮影を大野が担当。冒頭のプレゼンテーションでは、徐から子どもたちに「写真はどういうときに撮りたいと思う?」と問いかけが。「僕たちは、広告の仕事をしています。広告では、写真を“すてきだな”“おいしそうだな”と見た人に関心を持ってもらうために使っています。こうしたらもっとすてきにみえるな、おいしそうにみえるな、と考えるのがディレクターの仕事。そしてそれをフォトグラファーに伝えて、実際に一緒に考えて、工夫しながら撮影をして作品を作っています。毎日が夏休みの自由研究をやっているようで、楽しいです。今日は、そのディレクターとフォトグラファーの両方の役をみんなにやってもらいたいと思います」

どうしたら人物の魅力的な表情を撮影できるのか、お菓子やケーキをおいしそうに撮影できるのか。必要なものは何なのか、実際に広告の現場で使用された写真を参考に、子どもたちと一緒に考えてみました。

アドバイスをもらって、写真の世界に入り込むことができた

人物撮影を選んだ中学2年生の参加者は、写真クラブに所属し普段からカメラで撮影をしているものの本格的なスタジオでの撮影ははじめて。

「お母さんをきれいに撮ってあげたいなと思いました。イメージは雑誌の表紙のような、おしゃれな感じ? 難しかったのは、シチュエーションの決め方。立っているのがいいのか、座ったほうがいいのか。どう撮れば、資料のモデルさんの写真みたいにできるんだろうと迷ってしまいました」

シャッターを切るタイミングに迷っていると、曽根原から「液晶モニターじゃなくてファインダーをのぞきながら手持ちで撮ってみたら?」と声かけが。手持ちだと、自分の手で自由に構図を決められます。この言葉をきっかけに参加者のフォトグラファースイッチがオン。シャッターを切るスピードが上がります。

「アドバイスをもらって、ファインダーでみてみたら写真の世界にぐっと入りこむことができたんです。笑った瞬間にシャッターを押すと、いい表情が撮れるんだって気づいて。被写体の動きに合わせて撮ればいいんだとわかったら、途端に面白くなってきました」

光の選び方で、写真の仕上がりが変わる

フード撮影を選んだ小学5年生の参加者は、ドーナツやチョコレート、クッキーなどたくさん用意されたスイーツの中から、水色のゼリーを選びました。

「海みたいできれいな色だなと思いました。夏っぽく撮影してみたくて。澄んだゼリーの色がきれいにでるかなとガラスの器を選んでみました」

ところが、撮影前にガラスの器にゼリーを移そうとしてゼリーが崩れて真っ二つに! でも、そのくずれ方も生かそうとプランを変更。ディレクターには臨機応変な対応力も必須です。スプーンを画面に入れることで、ゼリーを食べているシーンを想起させるイメージを作りあげることに。撮影をした感想は?

「おいしそうに見えるためには、ただ撮るんじゃなくてどういう光を当てるかが大事なんだなって、はじめて知りました。今回、やわらかい光と強い光の両方をトライさせてもらって、強い光を当てたほうが、ゼリーの青い色がきれいに出た。光の選び方で写真の仕上がりが、こんなに変わるんだってびっくりしました」

このほかにも、「パパを面白く撮りたい!」という子は、カラーライティングとフルーツの置物を小道具に使ってアーティスティックに撮影したり、お気に入りのぬいぐるみを持参して友だち同士でポートレイトを撮影し合ったり…自由にアイデアを出していました。フード撮影でも、家族の食卓をイメージして撮影をしたり、好きな色や形で揃えてお菓子に統一感をだしたりと、子どもたちそれぞれのアイデアや工夫を凝らした創造性がさまざまなところに発揮されていました。

クリエイティブプランナーの徐は「予測不能で面白い体験だった」と初回のワークショップでの成果を振り返ります。

「今回、はじめてのチャレンジだったのでどういうプログラムだと子どもたちが自ら進んでやってくれるのだろうかと悩みましたが、実際にはじまってみると、子どもたちは自ら進んでやりたいことをみつけて動き出すんだとわかり、これはあなどれないぞと思いました。なかにはぶっ飛んだアイデアを持っている子たちもいて、大人では辿り着けない作品作りには、スタッフ側にとっても大きな刺激を与えてもらえるものだと感じました。今回、ワークショップを経験した子どもたちが、写真を面白いと思ってもらえたり、自身の中にあるクリエイティブを活かせる仕事があるんだということに気づいてもらえたり、少しでもなにか作ることの楽しさの可能性を広げる、きかっけになれたらうれしいですね。私たちもこれからもっと子どもたちとたくさんのことを学べるような、プログラムを検討したいと思います。」

また、講師を務めたフォトグラファーの2人にも2回のワークショップを終えての感想をききました。

「子どもたちが自主的に動けるように僕自身はできるだけサポートにまわろうとより意識しました。ひとりひとりにかけられる時間が短い中で、どれだけやってみたいことを引き出して実現させてあげられるか。それを助けてあげることにフォーカスしたいなと思いました。子どもたちの中からでてくるものを大切にこれからもプログラムとしての精度をあげていきたいと思います(曽根原)」

「今回は、撮影の前にやるラフづくりを丁寧にやってみようと思い、それがうまくいったと思います。ラフの絵もしっかり描いてもらいました。まずは、想像力を働かせて自分の中でイメージを膨らませる。なにをいいと思って、どういうシーンを撮影したいと思うのか。子どもたち、それぞれにきちんと考えてもらいました。大人では考えつかないような、お皿に山盛りのおやつだとか、色のカラフルな組み合わせ方だとか、そういった自由な発想はできるだけ活かしたいと一緒に楽しく撮影に取り組めたと思います(大野)」

ワークショップを終えた子どもたちは「たのしかった」「またチャレンジしてみたい」「もっと撮りたかった!」と多くの刺激を受けた様子。子どもたちが、豊かな未来を想像できる「クリエイション体験」を提供する「amana for kids」、その今後にさらに期待が膨らみます。